自治体議会の広聴活動に関する一考察
「自治体議会の広聴活動に関する一考察-自治体議会に対する市民の声のテキストマイニング分析-」『公共コミュニケーション研究』第2巻 第1号,2017,公共コミュニケーション学会.(全文ダウンロードできます)
概要
本稿では、議会の広聴活動の枠組みを示すとともに,議会が主体となって実施した調査によって収集された自由記述データ(二つの世論調査を取りあげる)に対して,統計手法および自然言語処理やデータマイニングなどの複合技術であるテキストマイニングによる分析を行い,自治体議会に対する市民意識の構造を明らかにしている。
二つの自由記述データの分析結果
X議会に対する自由意見
X議会に対する自由意見に関する主なクラスター
クラスターラベル | サイズ(比率) | クラスターの特徴 |
クラスター1
「意見の反映」 |
475(61%) | 「市民」「声」「対話」「反映」という語句に代表されるグループ。
*クラスターサイズが最も大きい |
クラスター2
「不透明な活動」 |
195(25%) | 「活動」「内容」「何」「不明」いう語句に代表されるグループ。
*クラスターサイズが2番目に大きい |
クラスター3
「身を切る改革」 |
73(9%) | 「定数」「報酬」「削減」という語句に代表されるグループ。 |
クラスター4
「広報の拡充」 |
40(5%) | 「市議会だより」「ホームページ」「内容」「中継」「充実」という語句に代表されるグループ。 |
Y議会に対する自由意見
Y議会に対する意見は「市民意見の反映」「身を切る改革」「市政への無関心」という三つの意見グループで構成されることが明らかになった。Y議会においても「市民意見の反映」という広聴活動の拡充が最も大きな部分を占めている。2番目のグループの議員定数や報酬の削減といった意見はX議会と同様である。3番目のグループは市政に対して関心がないという意見である。これは相対的に少数意見ではあるが,住民の議会に対する疎隔感を示すものであり,Y議会の存在意義にかかわる重要な問題であると考えられる。
Y議会に対する自由意見に関する主なクラスター
クラスターラベル | サイズ(比率) | クラスターの特徴 |
クラスター1
「意見の反映」 |
105(77%) | 「市民」「意見」「調査」という語句に代表されるグループ。
*クラスターサイズが最も大きい |
クラスター2
「身を切る改革」 |
24(18%) | 「定数」「報酬」「税金」という語句に代表されるグループ。
*クラスターサイズが2番目に大きい |
クラスター3
「市政に無関心」 |
7(5%) | 「市議」「市政」「関心」といった語句に代表されるグループ。 |
テキストマイニング分析の意義
今後,議会報告会や意見交換会など議会による広聴活動の整備が進むとともに,議会が得られる市民の声は増加することが予想される。しかし,大量の市民の声データが手に入ったとしても,それをいかに分析し,活用していくかが大きな課題である。市民の声を集めることだけが広聴活動の目的ではない。それを分析し,市民理解や政策提案に活用することが重要である。テキストマイニング分析から得られる結果をどのように評価するかはわからないが,従来の分類分析に加えて,新たな分析を検討する時期にきていると思う。